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「べっぴんさん」18話。なぜ盛り上がらないのか。

 

 

18回はざっとこんな


夫の紀夫くん(永山絢斗)が戦争から帰ってこない中、潔(高良健吾)の戦友・岩佐英輔(松下優也)がすみれ(芳根京子)に特別な好意を持ち始めた様子。でも、すみれは気づかない。
すみれは、エイミー(シャーロット・ケイト・フォックス)のために西洋のおしめを研究しようと、明美(谷村美月)を探す。でも、やっと会えた明美はすみれに冷たかった。

【いまいちど、「べっぴんさん」の全容を復習すると】
ヒロインのモデルは、神戸の子供衣料メーカー「ファミリア」(白いくまちゃんのキャラクターでおなじみ。銀座にも大きな店舗がある)をお友達4人で立ち上げた坂東惇子。
何不自由なく育ったヒロインが、戦争を経て、資産を失い、それまでの価値観を根こそぎ変えざるを得なくなった世界で、「想いのこもった特別な品(別品)」を作って生きていく物語。
亡くなった母親に教わった刺繍や、出入り業者のこだわりの靴など、愛や技術で出来た手仕事の数々に囲まれて豊かな心持ちになっていく物語・・・と見た。

全然悪くないのになんだか盛り上がらない


丁寧なつくりなのだが、話題はもっぱら、視聴率が20%を割った、戻ったの繰り返し。そもそも、20%前後なら大騒ぎすることもない。ほかに騒ぐことがないのだ。なぜだ。
最大の気になる点は、話の展開が早すぎて、どこに焦点を合せていいのか、まだわからないこと。
戦後復興を書きたいのか、手仕事バンザイを書きたいのか、夫婦愛を書きたいのか、女子4人の友情を書きたいのか。まあ、全部なんだろうけど。

ヒロインがおとなしすぎる


あっという間に母親になったヒロインすみれが「なんかな、なんかな」と思ったことをなかなか口に出せない性格で、台詞も少ない。その分、ナレーション(死んだお母さんが見守っている設定)がすみれの気持ちを代弁している。朝ドラのヒロインは「明るく夢を追いかける」が第一条件という先入観を覆すトライである。
とはいえ、これが最初というわけではない。
これまでもときおり、そういうトライは行われている。例えば、引っ込み事案な末っ子だった「梅ちゃん先生」や、夢が嫌いな「まれ」というひねりが加えられる。あの底抜けに明るかった印象の「あまちゃん」だって東京では存在感のない少女だ。それなりに毎回、デフォルト設定から離れようという努力(そうしないとどれも同じになっちゃう)をしていて。ただ、変化させた分、ほかでバランスをとってきた。「梅ちゃん先生」は家族(とくに男性陣)が明るい。ナレーションも噺家林家正蔵で軽妙。「まれ」は夢が嫌いなだけで元気過ぎるほど元気で、逆にそれがうざがられたことも。「あまちゃん」は東京では地味だった子が東北に来たらガラッと変われて、やがてアイドルを目指してある意味東京に凱旋する逆転ドリームが描かれた。戦争があってもなくても、なんだかんだで全体的に明るいのだ。

ところが「べっぴんさん」は明るい要員が少ない。ナレーションも菅野美穂でゆったり。明るい要員かと思ったお父さん(生瀬勝久)と忠さん(曽我廼家文童)もあっという間に戦争のショックで気弱になってしまった。お笑い系からの参戦・名倉潤も早くも亡くなってしまった。
姉の蓮佛美沙子、義兄の高良健吾・・・凛としているが、真剣に生きている感じを発揮し過ぎて、気が抜けない。
ふっと笑って体の力が抜ける人物が少ないのだ。いまのところ靴屋の市村正親がひとりでそれを背負っている。

最大の問題は、世間知らず


すみれは、貧しくなったとはいえお嬢様育ち。
子供の頃に、お手伝いさんの娘・明美に良かれと思ってお菓子を差し出し、自尊心を傷つけて以来、
明美はずっとすみれを恨んでいることに気付かない。18回で良かったのは、すみれを拒絶する明美が階段の上からすみれを見下ろすところ。じつに皮肉めいていた。

おしめについて聞きたくて熱心に明美を探すわりには、明美のことをちゃんと認識していないすみれ。
意外とひどい子なのだ。
明るく前向きで夢に一直線な子がひとを切り捨てていくよりも、不器用だけどいい子みたいな感じにもかかわらず他人に対して思慮が浅いとはもうかばいようがない。思ったことが言えない分、他人の気持ちが人一倍わかる子だったら良かったのに。

いや、きっと、これからそういう子になっていくのだろうと期待している。

余計なお世話だが、どうしたらいいのか


ヒロインの芳根京子は儚さがすごく良いし、思ったことがなかなか言えない、でも芯は強いっていうキャラクター像も悪くない。むしろ今日的だと思う。
昨今のドラマ、そういう内向的なキャラが散見される。
同じNHK の「運命に、似た恋」(金曜10時)のストーカー・カメ子(久保田紗友)や、「レンタル救世主」(日本テレビ 日曜10時半)の志田未来演じる百地零子などが、想いをうまく言葉に出せず、ぼそぼそブツブツとめどない独り言を吐き続けていて面白い。
とくに、志田未来が演じている女の子は強烈で思いが募ってラップになってしまう。この「フリースタイルダンジョン」をドラマに取り入れたようなアイデアは、思いを吐露する長台詞がそろそろデフォになってきた連ドラにプチ革命を起こした。
すみれも、ラップでしゃべるのを参考にしたり、物凄い勢いで針仕事したり、何かギャップをつくって、この沈殿した空気を上げたらいいんじゃないかと余計なお世話だが思う。

予告を見ると、4週ではお友達の良子(百田夏菜子)と君枝(土村芳)と再会しそうなので、彼女たちの力でドラマが活気づくことに期待している。ももクロパワーだけが頼りかも。