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日本一長い? 「赤」が6分30秒の道路信号機 誕生の背景に鉄道の歴史

 

 

福井・滋賀県境に、「赤」の長さが6分30秒にもなる道路信号機があります。なぜそのような信号が設置されているのでしょうか。背景には「鉄道」が見えてきます。ちなみにその信号機、「青」の長さは大きく異なります。

 

カップラーメンが余裕で出来上がる赤信号

 クルマを運転しているとき、赤信号の長さにため息をつくこともあるでしょう。しかし日本には、なんと6分30秒も「赤」が続く道路の信号機があります。


「赤」が6分30秒も続く福井、滋賀県境にある県道140号線の柳ヶ瀬トンネル(写真出典:福井県建設技術協会)。

 

 それは福井、滋賀両県が管轄する県道140号線、その県境に位置する柳ヶ瀬トンネル両端の、トンネルへ入るクルマに向けて設置された信号機です。

 

 これほど長時間わたって赤信号が続くことには、もちろん理由があります。この柳ヶ瀬トンネルは1352mもの長さですが、幅が狭く、クルマのすれ違いがほぼ不可能。福井県側、滋賀県側から交互にクルマをトンネルに進入させ、その通過を待つため、6分30秒も「赤」が続くのです(トンネル内に2か所の離合場所が存在するが、現在は完全交互通行で運用)。

 

 なぜこのような、赤信号を6分30秒も続けねばならない狭く、長いトンネルが生まれたのでしょうか。それには、ある歴史が関係します。柳ヶ瀬トンネルは元々、道路のトンネルではなかったのです。

 

近畿~北陸間の輸送で重要な存在だった柳ヶ瀬トンネル

 2016年現在、クルマとバイク用に供用されている(路線バスを除く大型車、歩行者、軽車両は通行止)柳ヶ瀬トンネルですが、もともとは官設鉄道の単線の線路として誕生。のちに福井駅金沢駅富山駅経由で近畿地方北陸地方を結ぶ重要な鉄道路線国鉄北陸本線の一部になります。「単線」とは、かんたんにいうと線路が1本の状況で、線路が2本あり列車がすれ違えるものは「複線」といいます。


地図中の赤い点線がかつての北陸本線(のちの柳ヶ瀬線)のルート。往時、北陸本線における難所のひとつで、蒸気機関車の乗務員は大変苦労したという(国土地理院の地図を加工)。

 さて、この柳ヶ瀬トンネルを含む区間は1882(明治15)年に開業しましたが、勾配が厳しく、北陸本線における輸送上のネックになっていたことから、1957(昭和32)年に長いトンネルをともなう新線(現在の北陸本線のルート)が開業。柳ヶ瀬トンネルのある旧・北陸本線の線路は、柳ヶ瀬線という木ノ本駅(現・滋賀県長浜市)と敦賀駅福井県敦賀市)を結ぶローカル線になりました。

 

 しかし柳ヶ瀬線の利用状況は思わしくなく、1964(昭和39)年に廃止。柳ヶ瀬トンネルは道路化され、列車の代わりに運転される国鉄バスの専用道路に生まれ変わります。これがのちに一般開放され、現在へ至っているのです。

 つまり柳ヶ瀬トンネルは元々、1本の線路を通すための「単線トンネル」として造られたため幅が狭く、クルマがすれ違える十分な幅がないことから、6分30秒もの赤信号が誕生した、というわけです。

青信号は13分の1

 この柳ヶ瀬トンネルがある福井県敦賀市周辺で、北陸本線はルートの変更をほかにも行っており、敦賀駅から北東方面に位置する今庄駅(福井県南越前町)とのあいだにも、鉄道の線路を転用した同様の道路トンネルが存在しています。


信号機のすぐ横に「待ち時間5分」の表示がある葉原トンネル(写真出典:福井県教育庁)。

 福井県敦賀市北部の山間、北陸自動車道の上下線に挟まれるように位置する葉原トンネルの入口には「待ち時間5分」と掲示された信号機が、そしてさらにその北方、敦賀市と南越前市を結ぶ福井県道207号線には、入口に「待ち時間3分」と掲示された伊良谷トンネがあります。

 鉄道ではしばしば、古くに開通したもののカーブや勾配が厳しく、輸送上のネックだった区間において、発展した土木技術を用い長いトンネルなどによる新ルートを建設、その問題を解決することが行われています。ここで述べた北陸本線敦賀市周辺も、そうした場所のひとつです。

 さて、待ち時間が6分30秒にもおよぶ赤信号、そこを通る人々はどのように思っているのでしょうか。

 

「慣れている方の利用が多いため、とくに苦情などは来ていません」(福井県敦賀警察署)

 

 ちなみに柳ヶ瀬トンネルで「青信号」が表示される時間は、6分30秒もある赤信号と違い、14秒から30秒と短くなっています(時間帯により変化)。赤信号の「6分30秒」という時間は、「青信号でトンネルに入ったすべての対向車がそこを通り抜けるまでの時間」として確保されているものです。

よって、仮に青信号を6分30秒出したとすると、反対側の入口はその倍ほどの時間、赤信号を出さなくてはならなくなります。

 

 柳ヶ瀬トンネルにおいて、青信号の時間が30秒の場合、約1時間あたりの赤信号は「6分30秒×8」で52分もあるのに対し、青信号は「30秒×8」で4分、13分の1しかない計算です。ここを信号待ちせず通り抜けられたら、なかなかラッキーかもしれません。