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実は鉛筆のオマケだった! MONO消しゴムが定番文房具になった理由

 

1969年に発売され、今もなお愛され続けている『MONO消しゴム』。

3本のストライプ柄は、見る度に学生時代へとタイムスリップする懐かしさがありますよね!

そんな誰もが1度は使った『MONO消しゴム』ですが、実は知らないことばかり。

株式会社トンボ鉛筆の川崎さんに、今でも定番文房具として愛される『MONO消しゴム』の誕生秘話や人気の理由について伺いました!

 

実は鉛筆のオマケだった

--『MONO消しゴム』はどのように生まれたのでしょうか。

いまからほぼ50年前のことです。

トンボ鉛筆は創立55年を記念して最高級鉛筆「MONO100」を発売しました。

この鉛筆の芯は、なめらかな書き味に加えて、何もなかったように字消しできる優れた性能を持っていて国産として胸を張る良質なものでした。

そこで、きれいに字消しできることを実感してもらうため、当時は珍しかったプラスチック消しゴムを1ダースのケースに1個つけたのです!

鉛筆と共にプラスチック消しゴムも大きな反響を呼びました。

(左)創立55年に発売された鉛筆「MONO100」(右)おまけの消しゴム

--オマケだった消しゴムの性能に、ユーザーが注目したんですね!

そうです。当時、高級鉛筆は機械設計や建築・土木の図面や地図製作などになくてはならないもので、精密に書けることと完全に字消しできることは、仕事の精度を高める上でとても大切なことでした。

中でもプラスチック消しゴムは、これまで普及していたゴム製の消しゴムより優れていたため評判に評判を呼びました。

そして、鉛筆「MONO100」の発売から2年後の1969年に『MONO消しゴム』として単独で発売することになったのです!

『MONO消しゴム』初期のパッケージ

--ちなみに“MONO”という名前の由来はなんでしょうか。

MONOの語源はギリシャ語の「monos」で、意味は「唯一の」「単一」「一つ」です。

「唯一の鉛筆」、「唯一の消しゴム」という意味を込めているとご理解ください。

命名者は、当時、有機半導体研究の第一人者の赤松秀雄元東京大学教授でした。

ちなみに、MONOロゴタイプの制作者はアートディレクターの河野鷹思先生です。

 

「書く」「消す」の理想的な関係を熟知しているからこその信頼感

--今や消しゴムのシンボルともいえる『MONO消しゴム』ですが、さまざまなメーカーの商品がある中で選ばれる理由はなんでしょうか。

お陰さまで『MONO消しゴム』は約5割のシェア※をいただいていております。(※事務・学習用消しゴム市場でのシェア)

その理由はさまざまあると思われますが、他のメーカーさんと違う点は、第一に鉛筆メーカーがつくった消しゴムという点です!

「書く」と「消す」の理想的な関係を熟知しているからこそ、高い消字性能の消しゴムがつくれるのです。

 

 

--確かに、書くものを作ったメーカーは、消し方も一番理解しているはずですからね。

また、約50年間一度もパッケージデザインを変えていない点も理由の一つでしょう。

青・白・黒のストライプのセンターにMONOとあるこのフェースが、いつも文房具店にある、コンビニにある、そしてこれを使ってみると、いつも確実で爽快な字消しができる!

つまり、ユーザーさんの期待を50年間一度も裏切らないで現在に至ったことが、長年愛されている理由ではないかと思われます。

--パッケージデザインの青・白・黒のストライプには、どのような意味が込められていますか。

デザインしたのは当社のハウスデザイナーでしたが、とくに色にメッセージを込めた訳ではないと聞いています。

デザイン計画としては、消しゴムは形の小さい商品ですから、これをお店で際立たせるために「旗(フラッグ)」の様式を応用したそうです。

消しゴムの造形は国旗の形にやや似ています。

MONOと同じ横ストライプはオランダ、ハンガリー、オーストリアの国旗に見ることができます。

シンプルで、印象が深く、流行に左右されない、ナショナル・フラッグの様式を採用したMONO消しゴムが、これからも学習や知識のシンボルとしてたなびいてくれることを願っています!

 

見た目はそのまま、中身は時代に合わせて進化している

--50年間ユーザーを裏切らないクオリティを保つため、どのような施策を行っていますか。

『MONO消しゴム』と聞いてみなさまが思い浮かべる、「MONO PE」という商品も、数年に一度、消しゴムの配合を見直しています。

字消性能(消字力)は、紙の性質によって変化しますから、さまざまな用紙が開発普及すると、それをリサーチするなどして性能向上に努めています。

--見た目は変わらなくても、中身はどんどん進化しているんですね!

デザイン面を変えずフェースを守り続けたことが、MONOの成功のひとつです。

ただ、2005年にユーザーさんからの提案を活かして、消しゴムのケースに「Uカット」という小さな加工を施しました。

それまでケースは4角柱のさや形でしたが、消しゴムの角が食い込むことが稀にあり、その食い込みが徐々に大きくなって消しゴムが割れることがあるとご意見をいただきました。

また、四隅にU字型のカットを入れるとそれが防げるというご意見もいただき、小さい改良ではありますが、ケースの四隅に「Uカット」を入れました。

 

少子化、IT化でも売上アップ!シェアも2割増に

--少子化、IT化は文房具業界にとって厳しい流れだと思います。『MONO消しゴム』の売上はどのように変化していますか。

『MONO消しゴム』は売上を伸ばしています。

当社売上金額は非公開ですが、図はリアルな販売金額に基づき傾向を表しています。

消しゴムの国内市場全体を見ますと、過去10年で約1割程度縮小しました。

ですが、当社のシェアは2割増加しています。

誠実な製品づくりとブランド力のお蔭です。

よく言われる少子化、IT化による影響は消しゴムのマーケットは軽微だといえるでしょう。

--それは意外でした。影響を受けない理由をどのように考えていますか。

ヘビーユーザーである学生さんの人数が少しずつ少なくなっていても、それを補うくらいの新しい商品やアイデアに富んだ商品を開発して発売しているからです。

たとえば「モノゼロ」は、ペン型のノック式消しゴムで、丸型の消しゴムは2.3㎜と極細です。手帳の小さな字の変更や、デザイナーやイラストレーターにもたいへん喜ばれています。

「モノゼロ」

「モノワン」は、リップクリームのサイズの消しゴムです。ペンを持ったまま使える特長があり、ノートの一字消しに最適です。

「モノワン」

「モノブラック」は、消しゴムに汚れが残るのが気になるというユーザーに応えた黒い消しゴムです。ブラックタイプには、消しカスが非常にまとまる「モノダストキャッチ」もあり、消しカスが床に落ちるのを防止ます。

(左)「モノブラック」(右)「モノダストキャッチ」

他にも、さまざまニーズを満たす数多くの消しゴムがあります。このように創意工夫してユーザーを開拓することで、消しゴムを元気なマーケットに育てています。

現在販売されているMONOシリーズの消しゴム全35種類

何気なく使っていた『MONO消しゴム』に、まさかこんなにもストーリーが詰まっていたとは……。

スマホやパソコンのように、1つ何役もこなすのが当たり前な今では感じられない、1つの役割(消すこと)を追求するモノづくりの本質に触れられました。

今も昔も変わらない安心感と、常にユーザーの使い心地に応えてくれる努力と愛情が、人気者で居続けられる理由ですね。

これからも変わらない良さを持って、さらに50年、100年と愛され続けてほしいです。