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ポケモンに飲み込まれた人口35人の村、ベルギー・ポケモンGOの聖地リロへ行ってみた

 

ポケモンGOがベルギーの村人の生活を一変させた。『フランダースの犬』の舞台として有名な町アントワープ。そこから北西へ約20キロ行った先、北海につながるスヘルデ河口域の一角に、リロという住民が35人しかいない小さな村がある。かつては砦だった場所で、函館の五稜郭のような星型をした軍事拠点の壁内が、村になった場所だ。



アントワープに至る港の守りの要だったリロ砦も、時を経て静かな集落になっていた。ところがポケモンGOのリリースが村人たちの生活を変えた。村内でレアポケモンが出るという噂が広まったのだ。平穏な村が一変、村外から訪れる大勢のポケモントレーナーたちであふれることになった。村内にある短いメインストリートは、今やスマホ片手の人々でごった返しているという。 

 

 

本当にそんなにすごい状況なのか? 確かめるべくベルギーにおけるポケモンGOの聖地リロへ行ってみた。

 



村までは電車やバスが通っていない


アントワープからリロまではバスや電車など公共交通機関がない。車か自転車か徒歩だ。最初アントワープからレンタカー利用も考えたが、小さな村の駐車場がポケモントレーナーたちの車で満車になっているという情報もあったため、レンタサイクルで向かうことにした。グーグルマップで目的地を設定するとアントワープ中央駅からは約1時間。山道でもないし、ママチャリでも頑張れる距離だ(そして内心、行程を甘く見ていた)。

リロはアントワープを中心とする港湾地域の一部にあり、村まではひたすら平地が続く。ところが走り出してみると、坂はないものの海沿いのため風が強い。向かい風になると当然ながらペダルが途端に重くなる。また30度を超える気温と快晴というコンディションに加えて、埋立地が延々続くため日陰がない。



自転車先進国のベルギーらしく、車道に自転車専用道が併設されていることが唯一の救いだが、正直に言って、それ以外は良いことがない。周囲は石油精製の工場群になっており、散策に来る人などおらず、自転車も時々ガチのロードバイクとすれ違うくらいで、ママチャリ(しかもレンタサイクル)はいなかった。ひたすら直線が続くのみ。景色の変化もない。つらい……。

村内にはあふれんばかりのトレーナーたちが


ただ無心にペダルをこぎ続け、ようやく村の入口までたどり着いた。村を形成する砦の外には、台数をさばききれないからか臨時の駐車場が設けられていた。ずらりと駐車されたポケモントレーナーたちの車。車でも来られたよ……!

駐車場だけでもこの車の数なので、村内は人々で大変なことになっているに違いない。石畳を歩きながら砦の中へ入っていくと、予想通りとんでもないことになっていた。



村にはポケストップが3カ所あり、メインストリート沿いを直線に並ぶ。そこをトレーナーたちが、頭を下げスマホをのぞき込み、ゾンビのようにひたすら往復している。時折、誰かが「ギャロップだ!」と叫ぶと、その場所に人々が群がり、別の場所で「ミニリュウだ!」と声がすると、群衆がそこへぞろぞろと移動する。かなり異様な光景だ。



中には歩くのをやめ、持参したイスやレジャーシートを道端に広げ、座り込みながら、ポケモンを捕まえる人もいた。

村のレストランは大繁盛!

 

 

 


ベルギー人トレーナーたちに続けと、私もポケモンGOを起動してみる。結果は2時間やって(そのうち20分間はメインストリートにあるカフェ内でやった)、69匹の釣果だった。調査のため、とにかく出現したポケモンはすべて捕まえようとしていたが、途中から捕獲作業が追いつかなくなり、コラッタピジョンはいくらかあきらめた。それでも、もっとも多く出現したポケモンがコイルで19匹を捕獲。次いでビリリダマが12匹。その他にはゴローン、サイホーン、カラカラ、フシギダネ、ギャロップ、ミニリュウ、ガーディなどが出た。



天気が良いためこの混み具合なのかと思いきや、現地メディアによると雨の日でも混雑するそうだ。トレーナーたちは傘をさしながら歩き回るという。日が暮れても混み具合は続くそうだ。一層、異様な雰囲気だろう。

ポケモンGOによる村への経済効果は大きい。村内にはレストランが2軒。1軒はメインストリートにあり、もう1軒は砦の外にある。どちらも繁盛しているが、特にメインストリート沿いの店は、ひっきりなしに客が訪れフル稼働状態。完全にポケモンGO景気が訪れていた。その他にも、車の一部を店舗にした移動式アイスクリーム屋が3軒来ていて、どの店も客足が途切れない。商売への影響は絶大だ。

リロがベルギーのポケモンの聖地というのは本当だった! 戦乱の歴史を乗り越え、かつての軍事拠点から平和な村となったリロ砦。まさかこの現代に、ポケモンGOによって再び外部から制圧されるとは、村人は想像していなかったに違いない。
(加藤亨延)

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